犬とハサミは使いよう (1日目)

犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)


ある日死んじゃったと思ったら犬になって生き返ったよ!というお話らしいです。転生という方法を用い、おそらく誰だって持っていると思われる人の変身願望をくすぐるようなテーマで攻めくるとは面白いじゃないかね。なんだよ犬かよ意外性ねーな!とかちょっと思ったけど別に良いの! ベタなことと面白いことは別だしね!
さて、そんな感じでこんばんは。本日はこちらの第12回えんため大賞優秀賞作品からお送りいたします。おお、ファミ通文庫とか1年ぶりじゃないか。
寝ても覚めても本を読むことが大好きな主人公くんは、ある日一休みに入った喫茶店で強盗にぶっ殺されるという実にありがたくないミラクルに遭遇いたします。そのままあの世へ一直線と向かっている途中、「死んだら本読めないじゃん!」という事に気が付いた主人公くんは本への情熱で現世へとなんとか舞い戻ることに成功。ただし目が覚めたらダックスフンドの姿だったそうな。
無理やり生き返ってしまうほどの本への執着があるのですから、本編はまさに本への愛情で溢れかえっております。溢れかえってはいるのですが、基本的に「本が好きだ!」と叫んでいるだけなのでかなり鬱陶しいです。アーハン?アナタハ、本ノ、何ガ好キナノデスカ?
読めればなんでもいいとばかりに活字中毒を主人公くんは自称してはいるのですが、それではなんとも拘りがなくてつまらん野郎だなと思わなくもないです。しかももう少し見てみると、なんでも読むっぽく言っている割には明らかにエンタメ系に好みが偏っているのが見受けられました。なんと、自分の好みすら把握しきれてないじゃん! まだまだ若いな主人公くん!
あと、ただいま本編がかなり迷走しております。一応あらすじの紹介文には「ミステリ系不条理コメディ」とありまして、他に「俺を殺した強盗はどこ行った――!?」なんて一文があったりしてどうやらミステリ色が結構ありそうだななんて最初は思っていましたが気のせいでした。
強盗の素性は初めからバレてるからもうそこにミステリアスな要素はありませんし、じゃあ犯人に関する動機やら裏やらを調べ始めるかと言えばそんなこともありませんし、というか途中で強盗のことなんか完全に忘れてますし。思わず「強盗のことはどこいったよ!?」って叫んでしまいました。
…ハッ!?
「強盗はどこ行った――」ってそういう事か!?