空をサカナが泳ぐ頃

空をサカナが泳ぐ頃 (メディアワークス文庫)


メディアワークス文庫から今月は新しい人がいっぱいきたーとウキウキのワタクシ。いつだって新たな出会いに期待で胸を膨らませているものなのさ。
そしてさっそく目に付いたのはこちらの本。普通に日々忙しく仕事をしている主人公さんがある日突然、それはそれは壮大で美しい海のロマンあふれる魚の群れを空で見つけてしまうそうな。真に奇怪な出来事ですけど、なんともステキな感じのする出来事じゃないですか空飛ぶ魚だなんて。一見すると害はなさそうだけどだからと言って何かに役に立つとも思えない、逆に目の前いっぱいに広がって視界の邪魔ですらある無駄具合がたまりませんね。無駄なことってどうしてこうも心を惹きつけられるのだろう。
そんなちょっとファンタジー風味を加えて、出版業界で働く主人公さんの成長物語が綴られていきます。
雰囲気がね、実にいいんですね。一人ウジウジ役を引き受けた主人公さん以外の仲間たちはみんなとっても能天気ですしね。うお、魚の幻覚が見えるよやべーよ俺!と狼狽するより、普段見慣れぬ美しい光景を楽しんだ方がいいに決まってるじゃんを実践する愉快な仲間達です。魚の幻覚が見える事から始まって、最後には主人公さんが一回り成長して目出度く終わると言う、綺麗な構成の爽やかなお話でありました。
だがしかーし!面白くはあったんだがこのお話のキーである空飛ぶ魚さんがあんまりファンタジックじゃないのがちょっと残ねーん!
他人には見えないと言う空飛ぶ魚は何かの暗喩だと言う事は一目瞭然、そいつはいったいなんなのさと悩むのがおもしろいんじゃないかー!そんで見えるのが自分だけっていう、ちょっとした秘密っぽい雰囲気があるからいいんじゃないかー!クスリの副作用ってなにさー!まったくもー!
誰もが体験できると分かって少し残念ですよ。おまけにクスリだなんて夢も希望もないぜ。
だからこの青春物語のファンタジックな部分に少し傷が付いちゃって、ただの青春物語っぽくなっちゃうのが哀しーなーとはなったんですが、それでも普通の良い青春物語でありました。