伝説兄妹! (2日目)

伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫)


さて昨日の続きです。
時は現代 日本のとある所に、金もやる気もない腐れ大学生が腹を空かせておったそうな。ある日空腹に耐えかねた男は食料を現地調達しようと近くの山へ向かったそうな。そこは腐れ大学生の男のこと、そう都合良く食料など見つからずあっという間に日が暮れてしまったそうな。その代わりそこで男が拾ったのは、自らの記憶も定かではないボケボケの女の子であったそうな…。
いきなり未成年者略取から始まるクレイジーストーリー。しかしこの程度の事はライトノベル界隈では日常風景なので、むしろ期待通りの出だしに私の気分も上々でございます。取り敢えず女の子を妹と詐称して一緒に暮らす事にしたらしいですよ。素晴らしいですね。ドリーミーですね。
さてこの男も、何も理由もなく出所不明の怪しげな荷物を背負い込む気になったわけではありません。この腐れ大学生には詩を吟じるという些か似合わぬエレガントな趣味を持っていたのですが、その女の子が試しに作ってみるとそれはそれは心に沁み入る素晴らしい詩を朗読したそうなのです。実は詩の才能もクソもなかった男はそれを聞いて大層醜いジェラシーを感じましたが、逆にこれは金になると思った男はボケボケの女の子を誑かしてせっせと作品を生みださせることにします。腐れ大学生が外道に成り果てた瞬間です。
さてそんな感じで基本的に憎きあん畜生な主人公なんですけど、こいつがなかなか絶妙な男で私は嫌いじゃないんですよね。行動が基本的にアホと言う事も好きなポイントですが、時折見せる優しさによって憎らし過ぎない微妙なラインを保つバランス具合がたまりません。始めは純粋だった女の子もこんな男の下ではあっという間に濁ってしまうだろうと思わされますが、例えばコーヒーを買って喜んでる女の子に対して「夜眠れなくなるから駄目」と結構まともな事で叱ってたりする姿を見て思わず笑ってしまいました。確かに純粋じゃなくなるかも知れないけれど、この男と暮らしていけたら世の中に出ても心強い性格に鍛えられるんじゃなかろうかという妙な安心感があります。それに好きな所があったり憎たらしかったりする所があるのがやっぱり家族だよという個人的偏見による所もある。
どいつもこいつも口が悪いという共通点を持つ友人たちとのやり取りを見ているのも楽しかったのですが、お話の方が意外とスケールがでっかくなって笑えました。なんか無駄に壮大なのもお兄さん嫌いじゃないよ!いいね!
いやぁ、実に期待した通りアホで面白いお話でした。魂のクロス・カウンターのセンスとかツボにきましたね。「カッコイイ!(笑)」とどうしても(笑)を付けたくなる情けなさ具合で泣き笑いです。