有頂天家族 (2日目)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)


どうしてこうも面白いお話を書くんでしょうかね登美彦氏は!スンバラシイ。
作者が文章を綴るときの文字選びのセンスがいちいち光っていて、文字を眺めているだけで面白さがあるレベルですよもう。読んでいるときは笑いの絶えない道中でした。
そんな愉快な家族を演じるのは、変幻自在のたぬき一族。宝塚風美青年に変化するのがお気に入りの母、一家を背負う長男、蛙のまま戻れない二男、特別に阿呆の三男(主人公)、ふわふわの四男、今は亡き父親の意志をしっかりと胸に刻み思い思いの道を驀進するこの家族を、なんと純粋な絆が結び付けているか。たぬきのくせに人間以上に人間らしい生き様を見せつけてくれます。本当に動物のくせに!
なんたってこの家族の父親は人間にたぬき鍋にされて食われていますからね。おのれ憎き人間!とはならずに様々な人との付き合いを通して父の最期の意味を問い続けるたぬきさん。しかもこの父親があまりにも偉大すぎで、生きていればたまには鍋の中に落ちることもある!とすっぱり覚悟して美味しく頂かれてます。もう人間許すまじと怒ればいいのか笑ってしまえばいいのかさっぱり分からなくなってるたぬきさんを見ていると、こっちも笑っていてもなんだか涙が出てくるようで、なんでこんな人間でも難しい問題にたぬきが冷静に立ち迎えているのかとあれこれ考えてしまいます。幻想との対比で現実がより際立つ、これがマジックリアリズムという手法なんでしょうかね。
すんごい面白かった!あと話に聞くと作者は続きも構想中らしいです。こいつは生きる希望が湧いてきた!