【大西科学】さよならペンギン

さよならペンギン (ハヤカワ文庫 JA オ 9-1) (ハヤカワ文庫JA)

久しぶりにハヤカワ文庫の棚を覗いたら可愛らしいペンギンさんがいたのでお持ち帰りしてきました。
ペンギンさんで量子SFをやるらしい。なんだかよくわからんけど、どれも興味を惹かれる題材でございます。あと作者はライトノベル作家らしいのですがさっぱりわかりませんでした。こんな時くらいにしか役に立たないだろうに、俺のライトノベルの知識ってホント中途半端ね!

まあいいや。そんな事より「さよならペンギン」です。量子SFやら観測者やら延長体やらの文字が躍るあらすじを見たときは何やら壮大な世界観を想像させましたが、始まってみると町の片隅の学習塾が舞台の、なんともこじんまりとした小市民空間が広がっていました。あらやだ、子供に囲まれちゃってなんだかほのぼのしてるじゃないの。
そう、SFとはいってもスペースオペラのように宇宙に繰り出す様なお話ではなくて、純粋に頭の中で行われる思考実験に趣を置いたSFでした。もはやSF界の四次元ポケットと化しつつある何でも叶えてくれる不思議な量子論は、何度聞いてもはぐらされているようにしか感じませんな!でもそのテキトーさが量子論の魅力であり面白く騙せるかがSFとしての見どころです。長寿も実現する量子ってスゲー。

ちなみにペンギンですけど、ペットです。主人公が家に帰るとなんかペンギンがいます。喋ります。女の子に変身します。別に主人公のおじさんはそれらをスルーするので普通の事みたいですよ。ふう、危なく騒いで恥かくところだったぜ!でもそんな静かな雰囲気が好きです。
そう、このお話は全体に流れる静かな雰囲気がとてもイイのです。おかげで一気に全部読んでしまいました。一旦区切って雰囲気が損なわれるのが嫌だったんですが、金曜じゃなかったら危ない所だったぜ。
なんでこいつら戦う必要があるんだろうとか良く分からない部分もあったけど、全ては量子が起こした確率の悪戯のせいなのでしょうがない。
世の中の出来事が全て観測の結果だとするちょっとした思考実験のお話、おもしろかったですよ。