【リリー・フランキー】東京タワー オカンとボクと、時々、オトン (2日目)

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)


この「東京タワー」、作者であるリリー・フランキー氏の実体験に基づいたお話らしい。
結構始めの方から固有名詞やら少年時代のエピソードやらが自叙伝かのように淡々と語られていくので、フィクションだと言われた方が多分信じられないと思います。このお話は作者の人生をそのままぶつけてくるわけで、500ページにほど良く納まるよう詰められたその十数年間が、あたかも実際に流れたかのような濃密な時間を感じさせてくれます。


お話は九州の炭坑町で育った主人公が、一緒に暮らしたお母さんと、たまに帰ってくる程度のお父さんとの思い出話を、生まれたときからの僅かな記憶から静かに遡って綴っていきます。
物語のスタート地点が、だいたい私が生まれる20年ほど前の事。自分の両親の年代とするにはちょっと若いかなーくらいの年代ですかね。そんな感じの人間がただ今読んでおります。
正直、幼少期から青年期の主人公の生活は、まー羨ましいとか憧れる事はないですかねー。オトン帰って来ないし、主人公素行あまり良くないし、オカン健気だし。上京して大学だって入学はしているものの、目標もなく卒業まで過ごし無職で借金生活。…ま、まあ主人公も見習えとは思っちゃいないでしょう。
そんな生活にあまり良い感情を私が抱けないのは、たぶん自分がその立場になってしまった場合から這いあがる姿が全く想像できないからでしょうね。人生ゲームオーバー。
でもそんなどん底にいる主人公は、どんな時も不思議と助けてくれる友人や知人がいて仕事もぽつぽつとこなせたりします。人と人との繋がりが、これほど心強い味方になるものなのかと再認識。正に自分に足りてないものを見つけると、正直羨ましくなっちゃいます。
緩やかに生活水準も向上していき、やがて良い歳になってきた後に、お母さんを呼び寄せてまた新しく生活し始める姿を見たとき思わず涙が。お母さんに朝起こされてご飯作ってもらって、なんか子供時代の家族の日常風景だなーなんてふと感じると、いい歳して嬉しくなっちゃった気持ちが伝わってきて泣けてきちゃいました。
お話の最初にお母さんが死んでしまう事が示唆されているので結末はもう分かってはいるのですが、その結末までに少しでも多くの幸せな出来事がみんなに起こってくれる事をお祈りしたくなります。
しかしチクショー、お母さんとの楽しかった思い出話だなんて泣くに決まってんだろばかやろーめ。まだ読み終ってないし、本もとっくに閉じてるって言うのに涙が出てくるじゃねーか。