正義のミカタ(3日目)

正義のミカタ (集英社文庫)


なんという静かに心響く爽やか青春物語。終わりの良い話っぷりになんだか涙が出てきそうだぁ。
読み終ってみるとド派手なアクションも親のかたきの様な悪党も窮地を救うスーパーヒーローもなかったこの「正義のミカタ」。結局なんのお話だったかと思えば、いじめられっ子だった亮太くんがこの本が終わるまでにほんのちょこっとだけ成長する物語だったというわけでした。ただこのほんのちょこっとの成長がとてもイイ。凄くイイ。亮太くんが最後に選んだ道とかもうね、バカだよね。自分の身の程を知れって感じだよね。なんかその不器用だけど自分の心に正直な生き方を見て思わず涙を誘われちゃった人とかいるらしいよ。(俺さ!)
もうタイトルの正義の「ミカタ」というあからさまな含みとか、読み終った読者にクサい考えをさせる罠以外の何者でもないですね。クサすぎてわざわざここに書くのはちょっと恥ずかしいので、タイトルを見ただけではピンとこなかった人でも読めばきっと分かるよとだけ言っておきます。
最後の電車の座席を譲るエピソードから、そうやすやすと安心して本を閉じさせてくれない作者の嗜虐的な心理を感じます。老人に座席を譲らせるために、座っている若者を悪人のように仕立て上げやがった。まるで亮太くんは正義の味方みたいだな。最後の決意が行動に表れるのはまだまだ先のようですね。