正義のミカタ(2日目)

正義のミカタ (集英社文庫)


いじめられっ子だった主人公の蓮見亮太くん18歳。新天地であるはずの大学でもかつてのちんぴらクラスメイトと遭遇するというミラクルを起こします。おかげでどす黒い青春を再び繰り返す羽目になるかと思われたそのとき、たまたま通りがかったもう一人のちんぴらに助けられるというさらなるミラクルに遭遇。その彼に誘われて亮太くんは「正義の味方研究部」の一員になったとさ。
なんか秘密結社みたいな名前の部活動ですけど、その実態は学内の治安を守る風紀委員会みたいなものみたいです。東に泣いている人がいれば首を突っ込んで犯人を吊し上げ、西に乱闘騒ぎがあれば行ってぼっこぼこにして…と、結構行動が荒っぽくて正義の味方と言う名の私刑集団の様な感じの部活動です。誰からも嫌われそうな正義を振りかざす集団なんてやけにリアルです。しかし一人の被害者のために十人の加害者から恨みを買う、単純な損得計算では動いていない彼らを見ているとこういう形の正義もあるのかもしれないと考えさせられます。そうさ誰からも好かれる正義なんて所詮ファンタジーなんだよ!

さてそういう微妙な集団の一員になった亮太くんですから、主人公という立場にありながらヒーローとして活躍しているかと言うとこれまた微妙なところです。まあ彼もスカウトされたくらいなので人並ならぬ能力を持ってはいるのですが、いじめっ子のパンチを的確に顔面に受け止める動体視力(理由:避けるともっと痛い二発目が飛んでくるから)と度重なる腹部への攻撃により鍛えられた鋼鉄の腹筋(ボクシング経験者のお墨付き)というあまりにも哀しすぎる能力しか発覚していません。鼻血が垂れる前に素早くティッシュを鼻に詰める能力もありますけど、視聴者の涙を誘う以外にどうすればいいんでしょうかこれ。

そもそも世の中そんな分かりやすい悪党と全面的に潔白な善人なんてほとんどいやしないという、これまた微妙にリアルな揉め事ばかり発生するこの舞台では、正義のヒーローなんていう白黒はっきりさせようとする存在がもの凄く場違いに感じられます。このお話の中にはヒーローはいないようです。
ヒーローじゃないならダークヒーローかアンチヒーロー?問題はそんな良く分からないものが正義を振りかざしている事でしょうかね。作者はこの先どんなお話を展開するつもりなんでしょうか。まあ、とにかく今言える事はすっごく面白いです。