空色パンデミック1

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)


これはなー!設定がなー!良かったんだけどなー!内容がなー!物足りなかったんだよなー!
特発性大脳覚醒病、通称「空想病」が社会問題になっている世界のお話で、要は突然自分の事を物語の主人公と勘違いして通常の日常生活を送る事が困難になる病気のお話です。発作的に起こるこの病気に対処するには周囲の協力が不可欠で、社会全体の理解度および国の方針等この病気に対するシリアスなバックグラウンドが想像を掻き立てます。やはり注目したいのは、他人へ妄想が飛び火する「劇場型」空想病の存在でしょう。かつて劇場型の妄想が全世界に飛び火し、世界の滅亡一歩手前の物語を全人類が演じて本当に世界が終わりかけたという恐るべき事態にまで発展したそうです。空想病の奇抜さ、スケールの大きさ、SFの香り漂う世界観にお話しへの期待も高まります。
しかしなー!なんつーのー!全体的に危機感とか緊張感とかが物足りないんだよなー!
いっぺん世界が滅びかかったんだからこの病気にもっと危機感を抱いて欲しいのに、世の中の人は何故か名前程度にしか知らないレベル。どういうことだ! 5人ほどのガードに一日中見張られている空想病患者は、恐るべき忍耐力でそのプレッシャーを一切感じさせず、政府より出るという空想病治療の賃金は高額と言う説明だけでその後ノータッチ。見張る方も見張られる方もどっちも辛いと思うのだけど、その辺の深刻さはあまり描写してくれなかったです。むしろガードが仕事だから仕方がなくやっている風を装っていてプロ意識が微塵も感じられないとは。それに政府が金を出しているなら税金が使われているはずですが、金にまつわるトラブルなんて面白そうな話題も無視。空想病に関する危機管理体制も十分な対策がされているとはとても言えず、これじゃ感染しないようお祈りしているだけと大して違わないじゃないかと正直思う。
期待したものが高かったという思いもありますが、この本の内容なら応えてくれそうな可能性はあった気はしました。くそぅ。