鳳凰堂みりあは働かない!

鳳凰堂みりあは働かない! (MF文庫J)

主人公の火車ヒイロは(超貧乏なのを除いたら)真面目で普通の高校一年生。同じクラスメイトの鳳凰堂みりあは超お金持ちのお嬢様。入学式も終わったオリエンテーションで、鳳凰堂みりあは「働いたら負けかなと思っている」と言い放つ。挙句に働かなくても良い職業だとニートを勘違いし、働く事に詳しそうなヒイロになり方を教えろと迫る始末。『働きたくないお嬢様が暴れ出す、ニート系ラブコメディ登場!(ってかニート系ってなに)』――だそうです。

どうしてこんなプロットで小説を書かねばならない事になったのでしょうか。作者にはそうするより他ない事情があったのでしょうか。これで面白くしろだなんて神様レベルの文豪だって出来るかどうか、余程腕の良い筆致の持ち主で辛うじて最後まで読ませ切り、その他多くは見るも無残に散って逝くのが関の山。余りに儚く、ただ嘆くばかり。私にはただただページを捲り、成り行きを見守る事しか出来ません。

やがてプロローグが始まり数ページ進んだところで、私は何一つ内容が理解できていない事に気付きました。なんと面妖な。昨日読み終わったはずのドグラ・マグラにまた迷い込んでしまったのか、はたまたその再来か…。自分を暗殺者だと称す快楽殺人鬼に自分を警察官だと勘違いした発砲狂、常人には理解できぬ理屈を振り回す、なんダここは地獄の続きか、私が狂ったか、何やら冷えた背筋だけが記憶に残るのみ。

冗談はほどほどにして正直な想いを述べるなら――ひどすぎるじゃなかろうか。たまらない。ただ無残な結果に終わる事などプロットが組み立てられた時点で自明の理でしたが、不確かな論理と実物はやはり違うものですね。読んでいるうちに想いが天井を突き抜けまして
これはひどい
   ↓
これはすごい

にまで昇華するとは予想していませんでした。「これは金取っちゃいけないんじゃなかろうか」と頭に浮かんだのは初めての体験でした。ああ、お前が今年の一番だと確信しました。何の一番かは知りませんが、とにかく抜きんでているのです。
自分は作者に踊らされているのか、勝手に踊っているのか…ハテハテ。しかしすごいナア。