【枡野浩一】僕は運動おんち (1日目)

僕は運動おんち (集英社文庫)

とある書店の新刊コーナーで、一冊の文庫を手に取って眺めている青年がいた。彼は後ろのあらすじを見ながら違和感を感じずにはいられない。一見特におかしいとも思えないそのあらすじはこうだ。
―― 運動も勉強もできず、落ち込みがちな高校生の勝。運動音痴から「うんちゃん」とあだ名され、同じ高校に美しい妹が入学してからは変に目立って、ますます死にたい毎日。そんな中、詩を書く柔道部の男子と親しくなり、彼の幼なじみである、髪の長い女子柔道部エースに恋してしまう。なぜか運動部にも入部するハメになり、学校生活は予想外の方向へ。笑えて元気が出る青春小説。 ――
彼は思い出していた。以前に読んだ作者の「ショートソング」の事をである。
ショートソングとはすなわち短歌の適当翻訳なのであるが、それはさて置きそのお話の主人公もとある女の先輩に憧れて始まるのである。主人公の青年は先輩に恋をするが、その先輩の傍にはイケメンのプレイボーイが既にいた。このままならただの恋敵に過ぎないプレーボーイくんだが、彼は青年と仲良くなるにつれ青年の美しさにときめき始めるのだ。作中のプレイボーイくんの戸惑いは見ものである。
「おかしい、この場合は女子柔道部のエースではなくて男子柔道部員のほうにときめくべきではないか。これは買って確かめねばならん」
思い返してみても、真に腐った動機で購入したものである。

さて、少し落ち着いたところで思い返してみると、別に主人公は女子柔道部のエースに恋をしても変ではないことに気がついた。ショートソングに当て嵌めて見れば男子柔道部員の方が主人公にときめけば良いのである。どうやら少々冷静さを欠いていたようだ。

実際、作中で柔道の場面が出てきて寝技からちんこを揉みだしたとき、やはりそうかとニヤリとしたものだ。


ここまで書いて、私は一体何を求めているのか解らなくなってきている。(続く)