【連城三紀彦】白光 (2日目)

白光 (光文社文庫)
昨日は誰かが嘘を吐いていると書きましたが、今日は皆限りなく本当の事を言っていると信用して進めたいと思います。


聡子も、幸子も、武彦も、立介も、桂造も、昭世も
みんなみんな親なんか辞めちまえ!
家族全員が暗い影と哀しみを持ち、後悔と現実の間で彷徨う姿が本書には描かれています。数年前から徐々に綻んでいった家族の関係がやがて殺人という歪みに結実した後、とうとう崩壊への歩みを始めます。崩れゆく関係と後悔の中でそれぞれが選ぶのは自己犠牲、過去の断罪、正当化に告発…いや懺悔も混じってるかな、渦巻く情念は物悲しくもあり淋しくもありです。


誰もがみんな辛い思いをして悲しんでいるんだけどさ!本当に誰一人として、殺された直子ちゃんの事で悲しんでるのがいないじゃないか!
大人達の罪に勝手に祭り上げられて、行動一つ一つや懐く懐かないに勝手な解釈をされて挙句に殺されちゃったんですよ。死んでからの役割は大人たちの自己分析の道具ですよ。まず自分ありきから考えが始まる人間ばかりだからこそ、非を認めつつ自己弁護に偏った告白は信用が増すんです。
・゚・(つД`)・゚・泣いてやれるのが見ず知らずの私だけなんて不憫じゃぁー
あと一人名前を挙げていない人物がいますけど、そのパートこそ最後のとどめで悲しかった。直子ちゃんを想ってくれる人は本当に誰もいなかったんだなー…と。
だから最後の直子ちゃんの台詞に大声で嘘だ!っていってやりたいです。「そんな事言うはずがない」と「本当だとしても絶対本心じゃ無い」という二つの意味でさ…。



なんだか静かに心動かされます。連城三紀彦氏の紡ぐ物語はいつだって穏やかだね。
あ、昨日の戻り川心中云々については「ですよねー」ってことで!