【原宏一】床下仙人 (2日目)

床下仙人 (祥伝社文庫)
OK、今日もやっつけいってみようか。

「戦争管理組合」
五週間ほどニューヨークの下町でロケして帰ってきたら、マンションの玄関に入ったところで女に猟銃を突き付けられた。内心ヒヤヒヤしながらとにかく話をしてみると、このマンションの管理組合は硬直化した男社会に宣戦布告、なんと現在戦争状態であるという。…なんだいったい。


こんどは仕事に熱中した女性たちの出番ですよ。男女雇用機会均等法で男社会にバリバリ進出して行った女性たちですが、昨今の不況の煽りをくらってリストラの嵐が吹き荒れたそうです。女性から首を切られるこの男尊女卑の構図は昔から馴染みのある…、というか昔なので現在はどうなんだろうそろそろ改善したんだろうかという感じですかね。営業や総合職の現状とはあまり縁が無いから実感がありません。でも社会で生き残る逞しい女性たちに縁が無いわけでもないですけどね。…思い出しただけでも背筋が冷えるネ…。
そんな女性たちが集まって起こす反撃の行方は?となるわけですが、悲しい程にステレオタイプな彼女たちと悲しい程に現実的な最後に寂寥感を感じざるを得ません。



「派遣社長」
取引先の紹介で訪ねてきた営業マンが提案するには「社長をひとり置いてみませんか。」だそうだ。顔写真入りのプロフィールファイルを見せられて、まるで派遣社員のようだと言ったらそんな感じなんだと。派遣社員ならぬ派遣社長。そもそもこんな事自分じゃ判断できないだろと困っていたら、当の社長が「おもしろそうじゃないか」、…なんだいったい。


経営コンサルタントみたいなものですかね。でも派遣社長はあからさま過ぎです。すんごい分かりやすいです。
他方面からの経営ノウハウを生かして会社再生を狙うという、ドリーム溢れる経営戦略。奇抜なアイディアで会社の業績が上がるたびに、社員がガンガン辞めていく姿がシュールすぎて笑いが…!
世の中に盲目的に従うことなく、自分を選ぶことができるタケウチの姿がイイー。



「シューシャイン・ギャング」
渋谷駅で信号待ちしていたら、いきなり靴を磨かれた…
って、ここにきてリストラされた男の物語が来るとは!
いままでの短編に出てきた人々は皆仕事が忙しくて忙しくて、もう常に肩肘張って世の中に体当たりしてきた毎日ばかりだったっていうのに…。ここにきて仕事が無いと、今までの忙しさがまるで夢だったかの様に錯覚してしまいます。心にぽっかり空虚が出来てしまったような静けさと物悲しさを感じちゃったりして、なんか、哀愁が…!
そんな中年男だから靴磨きをされても請求に応えられず、成り行きでいっしょに行動することに。社会からはみ出ると、周りを見渡す余裕がなかったんだなぁと思ったり。特に家族とか、ですね。な、泣いてなんかいないよ?


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最後の短編の出し方は反則級だ!
いい話で締めやがって…
くやしい…くらい良いじゃない…!