【劇団ひとり】陰日向に咲く (1日目)

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)
ベストセラーの評判にも揺れず、映画化にも揺れず、男は黙って文庫待ち。
されど文庫化したなら速やかに回収すべし。
そう決意して幾年。夕飯の食材を買うついでになんとなく寄った本屋で、なんとなく見た棚にあったこの本をなんとなくレジに持って行き現在に至ります。
ふっ、思いが永遠に同じとは限らないんだぜ…。


「道草」
劇団ひとりが小説書いた?ふーん、でも劇団ひとりって芸人でしょ。って思っちゃうのが普通だと思うんですよ。ですから物珍しさで買うことはあっても、決して小説家として買ったわけではなかったんです。
でもこの、会社で働くのに疲れホームレスに魅せられた男の物語「道草」。ちょっと自由に憧れる心情だとかホームレスとの生活とかが面白く書けているじゃなくてですね、単行本のときに恩田陸さんが寄せた推薦文「ビギナーズラックにしてはうますぎる」はこの事だったのか…!と思っちゃったくらいの内容でしてね、
思わず口元が…!こう、ニヤッとしてしまう!
読み終わった後にね、ニヤニヤが抑えられないんですよね。



「拝啓、僕のアイドル様」
アイドル武田みやこ、通称ミャーコを追っかけているファンの僕の物語…。
劇団ひとりにここまで心を揺さぶられるなんて…!!
くやしい…でも…、感じちゃう…
純愛?純愛だコノヤロー!追っかけ野郎である僕の行動はちょっと引くというかキモチ悪いんですけどね、でもそれは愛だから仕方がないんですよ。
彼は悲しいほどに現実主義者であって、お近づきになってイチャイチャしたいとか思わないんです。アイドルなんて所詮は偶像で、都合のいいように解釈してるんだからこっちも都合のいいように楽しまなくちゃねって分かってて追っかけやってるんです。そんな95%の嘘の中に5%、ほんの少しだけ本気の気持ちをいれて、はみ出ちゃった部分が行動に出てしまっただけなんですね。叶うと自分すら信じてない希望を僅かでも抱き続ける姿が物淋しいです…。
空回りしても、変質者と勘違いされかけてもミャーコのためにエールを送り続ける日陰者の一途な想い。ええ一途ですとも。
多くは望まないんです、彼女が笑っているだけで十分なんですよ…、ファンですから。



「ピンボケな私」
今度はおばかな女性のお話ですか。年は二十でも心は坊やで、友達の会話の中でむきになって見栄張ったり。見栄張ってカメラマンを志しても、買ったデジカメの説明書を読む気になれず、写真を移すことも消すこともできない有様。おやおや考えることを知らないお嬢さんだ、と思っていると開き直る彼女。思い切ったカメラの使い方。
ばかなのに、…どうしてこんなに切ないの、この使い方。
読者なら余裕で分かることに気付かない彼女がもどかしいんです。このおばか!
でも、純粋でもある、素直でもある…のね。
あと、三木君の様子におや?っと思うところが。つ、次か?これは次への伏線ですか!?


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ちょっとまて、予想外にもほどがあります。劇団ひとりに小説の才能がある云々がなくても、この小説が好きだと言えるなんてどういうことですか。まだ短編は残ってるのに。
明日に続きます。