【原宏一】床下仙人 (1日目)

床下仙人 (祥伝社文庫)
表紙に輝く「新奇想小説」の文字にホイホイつられちゃった私。ついに10万部突破?現代版カフカの変身だ?なんのことですか。そんな感じのぶっつけ感想本日もスタートです。


「床下仙人」
表題作の床下仙人です…と、これ短編集だったんだ。


毎日仕事に仕事に仕事のサラリーマン、最近マイホームを買ってますます頑張らなきゃいかんが通勤時間が増えてしまった。土日祝日泊まり込みだって当たり前、忙しさMAXのところに突然妻から電話が。「家の中に変な男が棲んでるのよ!」、…なんだいったい。


同じ日本人である私でも思わず「OH,日本人働キ過ギネー」と言ってしまうくらいの超激務の男。この男だけが特別というわけでもなく、同じ会社に勤める社員たちもどうやら同じ状況のようです。恐ろしいのが、これぐらいやって当たり前と思ってしまう場の雰囲気ですか。これが企業戦士…!!思わず出版年月を確認してしまいました。単行本が1999年ということで少しだけ安心する私。うん、きっとこれは前世紀の出来事に違いない。
とまあそんな感じで忙しい男が家に帰ったら、変な男が挨拶して床下に消えていったという物語。激務の男の生活は、私が小さい頃によく聞いた「会社」のイメージによく似てます。その中でもキツイやつ。黒いよー。
現代日本を風刺とユーモアを交えて看破するとの触れ込みのですが、既に時代遅れな話ですね。…と信じたい。



「てんぷら社員」
深夜残業して打ち込んでいた報告書が、一瞬にしてパーになった。電源コードに足を引っかけたのは、おれより二十も年上なのに平社員の田所さん。最近北九州の支社から転勤してきたばかりだ。容赦の無い課長が出勤するまでに提出しなければクビかもしれずにうなだれていると、「わたしの責任です。わたしが課長をなんとかしますよ」と田所さん。…なんだいったい。


また働きまくりの人間登場です。ヒィ!
今年から全社員にパソコン配布でネットワーク環境も整備、なんていってますからだいぶ昔の出来事なんでしょう。そうに違いない。
ノルマに追われて殺気立つ職場の中、パソコンの練習をしたりする田所さん。彼に助けられて以来、注目するようになったおれに知らされる田所さんの姿とは。
相変わらず胃が痛むような激務描写の中、笑顔で終わるさわやかなラストが印象的でした。
…というとでも思ったかバカヤロー!その提案、思いっきり黒じゃないか!