竜が最後に帰る場所

竜が最後に帰る場所 (講談社文庫)



この作者さんの新しい本が書店に並ぶと聞いただけで、ちょっと明日以降が楽しみになってくる。これは凄いことですよ奥さん。明日会社に行きたくない…(気力DOWN↓)、でも明日になれば刊行日に1日近付く!(気力UP!)。こんなに夢中になれる事なんてそうそう見つかるもんじゃありませんぜ。え、刊行された後はどうなるのって?知らん。
はい刊行されました。「竜が最後に帰る場所」です。(文庫版)
作者の恒川光太郎さんは作品の刊行ペースがだいたい1年くらいでしょうか。作風はこれも以前の作品もファンタジーちっくです。私のイメージ的には一年に一度やってくる親戚のおじさんが、各地を旅した時に体験した不思議な出来事を土産話として毎度持ってきてくれる感じ。もうね子供に大人気ですよ。お母さん、今年もおじさん来てくれるの!?やったー!!というか俺がヤッター!!うふふ、はしゃいでる姿が愛らしいですね。(もうすぐ30歳です)
今回のコチラは短編集となっていまして、全部で5つの不思議なお話が入っています。不思議なお話です。日本のどこかの、どこにでもあるような場所で暮らす普通の人間が、ふと気が付くと超常現象か異世界かよく分からない出来事の中にいるのです。ちょっと気分を変えて行ったことのない定食屋を覗いてみるとか、誘われて友達の知り合いの中に顔を出してみるとか、そういう新しい世界との出会いってあるじゃないですか。そんで定食屋に入ってみると少しいた店員らしき人たちの談笑がピタッと止んで揃ってこっち見てきて、まずはここって飯屋なのか聞いてみたほうが良いのかしら?と迷ったり、知り合いの中に顔を出してみたら合コンみたいになってて趣味は何ですか?みたいな嫌がらせみたいな質問が飛び出して来たり。(男どもに一通り白状させた後ここぞとばかりに同じ質問を聞き返そうとしたらスマホTwitter見だして女性陣で盛り上がっていました。ヤロウ…)
あるわけのない世界が、まだ入ったことのない定食屋の店内を想像するのと同じくらい身近に感じられるレベルで信じられる不思議なお話です。
個人的に一番好きなのは、表紙にも載ってるオウムが出てくるお話ですね。巻末の解説によると行き当たりばったりで書いていたそうなんですが、一番話の展開が無茶してて楽しいです。お礼の報酬が向日葵の種なのが可愛らし過ぎます。
楽しかったお話の時間はあっという間に過ぎてしまうものです。寂しいなぁ寂しいなぁ。楽しかったなぁ。