ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)


ペンギンかわいい。
ペンギンがいっぱい出てきます。どこからともなく街に現れて、物語の中を適当にうろうろしたあと何処かへ消えます。あんまり深い理論とかはない。そんなお話。別にそれでもいいお話。第31回日本SF大賞受賞作。
小学4年生の男の子が主人公でして、研究と称して日々のいろんなことをノートに書き綴るたいへん頭のよい子供でもあります。下手すれば理屈っぽい思考は大人を困らせるだけのクソガキ化を招きかねませんが、クソガキ化したらしたで作者さんは大いに笑わしてくれるクソガキさんを描いてくれますので問題はありません。でも今回は研究熱心で素直な男の子です。彼が遭遇した不思議なペンギンの出現と、不思議な力を持っている歯科医院のお姉さんの秘密を探求する記録日記です。
お話の進み方は基本静かです。日々の出来事が淡々と描写され、町に突如ペンギンがたくさん現れたと騒ぎが起こったとしても、小学生のアオヤマくんは横道にそれずにいつも通りの通学路を歩みます。友達のウチダくんはスズキくんにどうやらいじめられ気味だし、作りかけの宇宙ステーションの模型は材料のブロックが足りてない。あれこれいっぱい悩みはあるけれど、ただ彼はなぜかいつも自信満々なのは相変わらず。その中でも街中にペンギンが沸いて出たのは飛びっきり変な出来事でして、読み手である私はコーラの缶がぐにゃりと変形してペンギンになる場面も見ているんで事態の異様さはよくわかります。というか現場で直接見なければ分かりっこなさそうなこの問題に、アオヤマくんはどんな結論を出してくれるのだろうと期待半分、でも不安も半分。アオヤマくんも一応小学生らしい所もありますので、問題に対して「ほんとにそれ、重要なことか?」と思うような方面から果敢にも挑戦する冒険スピリットで道行く先はまったく予想ができません。ただ言える事はどんな行き先であれ、きっとオモチロイことになるだろうという期待だけです。
少年とお姉さんの行く末も気になるところですが、このお話には何故だかおっぱいの存在を無視することができません。おっぱいは好きですかと聞かれれば私も好きですから無視はしません。アオヤマくんはおっぱいが好きです。毎日30分くらいに自制して考えるくらいにはおっぱいが好きな少年です。取り乱してもおっぱいのことを考えればたいへん平和になると説く、ロマンチックなおっぱいくん。
彼が好きなお姉さんは、それは立派なおっぱいの持ち主らしい。ぴょんぴょん跳ねればゆれるほどの大きさで、形もおそらく綺麗な山を形成しているのでしょう。アオヤマくんが見た光景の素晴らしさが、たびたびおっぱいに形容されるところからも伺えます。若くして理想のおっぱいが目の前に存在することは彼にとって幸か不幸か。私には分かりません。ただ同級生のハマモトさんのおっぱいを彼が認識できないのは哀しいことだと思いました。小学4年生だから(いろんな意味で)仕方ないのかもしれません。小さいおっぱいが良いといっているわけでもありません。ただ今のアオヤマくんは、大きくて形の良いおっぱいしか見えていないんじゃないかと私には感じました。確かに彼が愛するおっぱいはそれなのかも知れませんが、目の前だけのおっぱいに囚われず、世の中にはいろんなおっぱいがあることを知って大きく育ってほしいと思っています。
でも本音を言うと、アオヤマくんにとっておっぱいは一番重要なことではないんだろうなぁと思っています。アオヤマくんがお姉さんと一緒にいるとき、おっぱいを見てることがバレても彼は正直で取り乱したりはしません。別に恥ずかしがったりぎこちなくなったりもしません。おっぱいは好き。でもそれ以上にお姉さんが好きなんでしょう。このお姉さんは小学生相手に本当によく遊んでくれます。一緒にカフェでゲームをしてくれますし、一緒にプールにも遊びに行ってくれるし、ちょっとからかい気味だけどずっとお話してくれたりもします。大好きなお姉さんだから、お姉さんのおっぱいも好きなんでしょう。その逆はありえない。いつも遊んでくれるお姉さんが一番大事だからこそ、最後の一言がなんとも切なくなるのです。
私も胸を張っておっぱいが好きだと言ってみたいものです。アオヤマくんの様な動揺も羞恥もないおっぱいの境地へ。だめだ、変態にしか聞こえないや。そういう意味じゃないと言いたいんですが、まあいいか。