はい、こちら探偵部です2

はい、こちら探偵部です(2) (電撃文庫)


ライトノベル発のとぼけたミステリーとの触れ込みのシリーズ。その2巻です。だか中身はそんな生易しいものじゃない…!!
こちらの作品の1巻が世に出たときは「主人公の話し方がキモイ」や「トリックがお粗末」といった感じの評価がWeb上で見受けられましたが、ワタクシ的にはそんな事よりもこの作品が持つ魅力と言うかキャラクターと言うか、そういったものがたまたまツボに入ったためそんなに嫌いな作品じゃなかったりします。キモイとかお粗末なのは認める。まあこんな作品を楽しめるなんて、ある意味作品に認められた的な特別感をちょっとだけ持ってたりとかしました。だけどそんな邪念を持つ私を見透かしてか、2巻でこの作品が牙を剥いてきやがったのです!
殺人とかの起こらない日常系とでも分類されるミステリーに一応なるかと思われるのですが、その日常系だった1巻から打って変わり2巻では探偵トーナメント編に移行します。路線変更が早過ぎるが大丈夫か? そしてこの一回戦が恐ろしくつまらない!助けてくれ!地獄だ!
探偵の力量を競う大会なのに一回戦はまんま高校生早押しクイズ。こんなもの主人公側が絶対勝つに決まってる出来レースで結果なんか端から分かっているというのに延々と続くキャラ同士の接戦、このページまるごといらないじゃないかと叫びたくなる水増し感あふれる会話。き、気力がもの凄い勢いで削られていく!おおお…おれは1巻で認められた特別な人間なんだぞ…!(雑魚っぽいセリフ)
そして続く二回戦でようやく推理対決が始まりました。ここで俺はこの作品の恐ろしさを味わった。
実際に起こったという事件を元にしたお題が出されて始まる推理対決。どちらが納得のいく推理を出せたかで勝敗を決すると言う、ディベート合戦にも似た形式で対戦が行われました。これは見ごたえのあるなかなか面白いシチュエーションだと思います。
軽く交互にジャブ的な推理を披露した後、主人公がある秘策を持っている事が判明します。なんとその事件の関係者は主人公の友達だったのです。試合中にその友達に携帯で事件の真相を尋ねる主人公。
(;  ゚Д゚)  エーッ!反則じゃねーか!
まさかの当事者に真相を聞くと言う荒技!納得もクソもない真実と言う名の答え!このディベートの意味すら揺るがしかねない、なんという強烈な一撃をかましてくるのでしょうか!
主人公側のターン!
「A氏は自らの犯行を否定しています。すなわち彼は犯人ではありえないっ!だから犯人はB氏ですよ!」
(※A氏、B氏と言っているのは問題がそうなってるから)
(;  ゚Д゚) エーッ!なにその推理!?
本人に質問できるという超有利な状況を微塵も感じさせない推理!ここで私の理性は崩壊しました。なぜだ…なぜ笑いが止まらないんだ…!
私の理性が崩壊している内にいつの間にか決着の付いている試合。明かされる目茶苦茶お粗末だけどそれなりに形が整っている事件の真相。そう…これです。これがこの作品の恐ろしい所です。ちょっとアンフェアなところもあるけれど、ミステリーの難易度はかなり易しめに設定されているのです。だけどどんなに易しくても!どんなに親切に手掛かりが示されていても!俺にはこの本のミステリーを何一つとして解ける気がしない…!気が付くと事件が終わっている!推理する段階にすら至れない!
読者の思考能力を奪う事で解かせないミステリー…!お、恐ろしい…!俺はこんなミステリーに今まで出会った事なんかないぞ!?
ちなみに地獄の全国探偵大会編で一冊終わる事は無くて、もう一本お話がこの巻には入っています。こっちも恐ろしいぞ…!
相手が思考力を奪う能力の使い手だと分かっていても奪われる思考力。今回のミステリー的手掛かりは「主要人物の不可解な発言」でしたが、はっきり言って気付くのは不可能なんじゃないかと思われます。だって「ふぉっひゃ…ふにゃあ!」とか「わたしにも、ちゅあちゅあをひとつくださいっ…!」とかそんなセリフばかりの中から見つけられるわけねーだろ!もうお前ら全員犯人だ!
なんかとっても長く語ってしまいました。なんだかんだいって私はこの作品が好きなのかもしれません。でも3巻も同じようなノリでくると俺たぶん死ぬ。