秋の牢獄 (2日目)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)


おぉ、これはホラーだ…!これより古いのと比べると一番ホラーっぽい雰囲気じゃないですか! ガンガン怖がらせるんじゃなくて、ひっそりと忍び寄って来るような恐怖を演出しておられます。
表題作「秋の牢獄」ほか、「神家没落」「幻は夜に成長する」の3つが収録されている短編集でした。
私が今まで読んだ中でも一番ホラーでしたが、それでも恒川光太郎さんだから大丈夫です。ちょっと怖いけど同時にワクワクしちゃうような、アングラ的楽しさがどの短編にもありました。特に「神家没落」の中盤辺り、移動式のカフェがオープンした辺りは逆に可愛らしいファンタジックな雰囲気すらしてきてなんか笑えたりもしましたよ。その後はホラーに戻っちゃったのが少し残念な気もしました。いやぁ、でもこの作者さんのお話の進め方が本当に面白いですねぇ。
ホラーだけど妙に男の子の心をくすぐる「幻は夜に成長する」もいいですね。これは主人公が女学生だから、学園ホラーにいつの間にか話がシフトしていても全然良かった。ただ短編だから短い!ちくしょうページが足りないよ!
ここまできたら「秋の牢獄」も面白かったねーと言いたい所ですが、これは正直言うとちょっと物足りなかったですね。これは同じ一日を繰り返すという時間SF系のお話なのです。パターンは違うけれど、一種のタイムトラベルみたいなものですからね。メジャーな要素ですから、たまたま雰囲気から恒川光太郎さん独特っていう感じが少し感じにくいなぁなんてこともあるだろうさ。


ああ、読み終ってしまった。刊行ペースを見ると、次の作品が文庫落ちするのは来年の今頃くらいなのかな。少し遠いなぁ。