交換殺人には向かない夜

交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)

この作者は久しぶりですねー。その時一番新しかった文庫の作品を読んじゃってから、実に2年強ぶりですか。それが今月発売のこちらの本。
別にナンバーが振ってあるわけじゃないので分かりにくいのですが、シリーズものの4冊目なのでちょっと注意です。
さて大抵このシリーズが紹介される時は「ユーモアミステリー」と呼ばれる事が多いと思います。ミステリーなので人が死ぬ事も多々あるシリアスな面もあるのですが、探偵役とその助手のコンビが基本的にアホな事ばっかりやっているのでそこに注目が集まっているせいでしょう。ええもう、まったく、ユーモアだなんて横文字を使ってなんだか親しみやすそうな印象を狙っちゃって。実際の所はしょうもないギャグを連発しているだけじゃないかと思うのですが、まあ十分ユーモアの範囲に入っていると言えるんじゃないでしょうか。私は作者の笑いが好きなので別に曖昧でもいいです。
そんな感じのユルいシリーズの例に漏れず、この本も殺人なんて付いているタイトルの仰仰しさを打ち消して余りあるお笑いに満ちたお話となっておりました。ほんと何度もしょうもねー!と思わず言ってしまったほどのしょうもないギャグがたまらんぜ!
しかしそれだけで終わらなかったのがこのお話。依頼人から頼まれた探偵業をこなしつつ間抜けな仕事姿を読者に晒している裏で、実は相当複雑怪奇なシチュエーションが進行していたなんて誰が気付こうか。物語の真相が驚きと共に明かされるという、ミステリーとして素晴らしいクライマックスを見事に成功させるなんて憎い演出です! ただ道中のキャラの行動が余りにもアホすぎて、その時までミステリーだと言う事を忘れていて御免なさい。うん、いきなり入り組んだ様相を呈する事件を見ている間、本当にこのトリックに作者は辻褄を合せる事が出来るのだろうかと別の意味のハラハラを感じていました。
まあトリックのために若干無理気味に合わせた物語と登場人物がちょっと私は気になるんですが、これはミステリー小説の宿命みたいなものだからしょうがないでしょう。それはこの作品に限った事じゃないですしね。読み終った感想はやっぱり面白かったですね!