【井上荒野】学園のパーシモン (1日目)

学園のパーシモン (文春文庫)

紹介文には学園小説。出版社は文芸春秋。作者は女性。きっとこの本で始まる学園劇には、当時自分もいた場所を思い起こさせる真に迫った重さがあるんだろうなと思って手に取った。読んでみたら予感は見事に当たった。女性作家が描く学校生活の空気感は異常なほどハズレ無し。たまにはハズレろと思うくらい。

ども、コンニチハ。学校を舞台にしたお話を読むと、いつも以上に書き手の男女の差が感じられると思います。書き手が男性の場合はどことなく夢見がちなお話が、書き手が女性の場合にはどこまでも冷静に現実を見据えたお話が、はっきりと意識できないまでもそんな感じの違いがある気がしてました。この本での学校生活を見ていると、妙に息苦しくてどことなく落ち着かずに不安になるんですが、それとは裏腹にとても馴染み易い感覚でもあります。今思うとなんだか面倒臭くて嫌になるけど、こんな感じの空気を学生の時は日常に感じていたのかなと物思いにふけてみたり。やけに身に沁みる空気感を作りだすのが、本当に上手いとしみじみ思う。

十代のきらめくような退廃を描いたと紹介文にあるように、ただ単に流されるように生きている高校生達の行く末なんてものには何の希望も見えやしないし、たぶんそのあとどんな風に生きていくのかもだいたい見知ったものじゃないかな思う。ただ、この学校に古くから流れている、選ばれたものにだけに赤い手紙が届くという噂については知らない。たかだか噂程度で騒ぐことなんかと思うけど、もしかしたらこの後のお話に大きな変化をもたらすかも、なんて期待はやっぱり持っちゃいます。男の子だもん。