【古処誠二】アンフィニッシュト (3日目)

アンフィニッシュト (文春文庫)

ははは、序盤のあれはミスリード、そんなの始めっから分かってたさ。ほんとだよ?


終始静かな歩みを続けていた物語ですが、最後の最後まで淡々と終わっていきました。
そして静かに本を閉じる…
そしておもむろに日本の国防について想いを馳せる…
何故にここに登場する自衛隊員たちは哀愁を帯びているのでしょうか。愛国心があるからこそ貧弱な防衛設備に憤る…、それでもその装備で最大限の防衛を施すプロ意識は流石。これを読むと自衛隊に対する意識が変わりますね確実に。


どんなに厳しい訓練をしても、その成果使わず無駄に終わって良しとするのが自衛隊だよね。現場で任務に就いている人ならともかく、上の人にこの無駄を増やして欲しいとお願いしてもなかなか理解されにくいものも分かります。
そんな憤りと愛国心が起こしたこの事件に憎むべき対象なんていませんね。やり場の無い思いが哀愁を漂わせるぜ…。


なにより本書の魅力は、淡々と軽快な語り口で綴られながらも軍事という重いテーマで進むギャップですよ。
そういう意味じゃ、前作のアンノウンも同じだね。
そんでいつも真摯な印象も受ける。この辺がふらっと作者の本を買っちゃう理由かな。