【いしいしんじ】雪屋のロッスさん

雪屋のロッスさん (新潮文庫)


好きな本ぼしゅう 3月のコメントより。
Nさんから、以前私が読んだ栗田有起さんの「マルコの夢」繋がりで、いくつか本を紹介してもらいました。
その中で雪屋のロッスさんが一番最初に見つかったので、本日はコチラの本からお送りいたしますね。
作者のいしいしんじさんはこのブログ初登場ですが、昔に他の作品を読んだことはありました。マルコの夢とどこか似ているかと言われれば、なんとなーく雰囲気は近いものがあるのは分かりますね。小さな子供に語りかけるような柔らかな言葉遣いと、寓話のような若干理不尽な展開のギャップがステキなのでございます。
さて今回の「雪屋のロッスさん」のお話ですが、全部で30(+おまけが1)話の短い物語が入った短編(掌編?)集となっていました。短いのでお気軽に読めます。でもなぁ、読んでしまった後で思うのも何ですが、いっぺんに読んでしまっては若干味わいを楽しみきれないよなぁと感じるところがアリアリです。全部10ページ以内、短いと2〜3ページでお話が終わるのですが、まぁその短時間でいろんな気持ちを揺さぶられる揺さぶられる。1ページで不安な気持ちにさせられたと思ったら、次の1ページでしんみりとさせられたりするんですよ。お話の密度がとっても濃くて、普通に読んでもビデオの早回しを見ている気分になりそうでした。焦らない焦らない。
31話のお話は基本的に、様々な職業で働く人の人生を一部切り取って粛々と綴られていきます。雪屋のロッスさんはそんな中の一人なんですね。雪が降らない街なんかで、機械を使って人工雪を降らせて人々を楽しませるお仕事です。他には床屋さんとか似顔絵描きとか、中には豚さんなんかもいました。職業はバラエティに富んでいますし、その語られる人生も悲劇喜劇様々です。その中で自分に近いお仕事と言えば「サラリーマンの斉藤さん」でしょうか。私も会社勤めですし、はてさてどんなお話になるのかな?
(読む)
 ↓
(;´゚д゚`)  ちょ、ちょっとやめてよね!?救いがないんですけど!?
サラリーマンの斉藤さんは自分の仕事に誇りを持っていますけど、何の仕事をしているのか分からなくて、指示をくれる社長がいなくなったら路頭に迷ってあっという間に街の雑踏に消えていきました。サラリーマンの扱い酷ぇ!他の職業は人とのハートフルな交流があったりするのに!ちくしょう、でも現実も似たようなものだから泣くしかないねこれ!
とまぁ感じる気持ちは人それぞれ。しかし毎回思うんですが、本の著者近影に載ってる写真の、作者さんのあの優しげなお顔って作風のイメージと似合いすぎる…。ギャップが無い…!