【橋本紡】流れ星が消えないうちに (1日目)

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)
橋本紡…?どっかでみたことある字面だなと思っていたら、この人「半分の月がのぼる空」の作者じゃないですか。ライトノベルっ"ぽい"作品あたりをフラフラ彷徨ってる私ですから、電撃から新潮社に出張してる作者にシンパシーを感じて購入。どうせならもっと有名な作品で出会いたかったけど、これも何かの縁でしょうね。
帯の詩的な内容紹介と、恋愛小説の文字は見なかったことにして突撃しました。

ただいま瀕死の重傷です。

恋人を事故で亡くしてしまった女性の視点で物語が語られていくんですが、心情をそのまま綴る私小説的手法と、大事な人を亡くしてしまったネガティブマインドの相乗効果が凄まじい。
不幸な出来事に遭遇した彼女ですが、社会的地位もある、帰る家もある、家族もいる、新しい彼氏もいるという現在の生活状況。残るは自分の心次第どうにでもなる状況で、「恋人に先立たれてしまった不幸な女」という境遇に酔い痴れるナルシシズム。不幸すらも楽しむことができるほど充実した彼女の、心情を吐露する言葉がっ!哀しみがっ!惚気がっ!容赦なく私に突き刺さります。あぁ、そんな風に自分に酔い痴れて生きていけたらどんなにいいことか。いじけていたって誰も助けに来やしない世界に生きる私は、彼女に共感することは出来ません。というよりしてはいけない。(でも本当はしたい。…なんなの、複雑な乙女心ってやつ?)
たまに彼氏視点で物語が語られることもありましたが、この彼女にしてこの彼氏あり、心根は変わらないという包囲網。序盤から旗色が悪いぜ…。

しかしまだそれらの要素は最大限の効果を発揮しているとは思えません。震えるほど心が揺さぶられる物語になる可能性がある、という段階でしょうか。炸裂すれば過去最高に死ねることも可能かもしれない予感…、こいつは面白くなってきましたね。