【小野不由美】東の海神 西の滄海

東の海神(わだつみ) 西の滄海―十二国記 (新潮文庫)


好きな本 ぼしゅう12月のコメントより。
>日本を代表するファンタジーの一つ→「十二国記シリーズ」小野不由美著。中華風の説得力のある世界観、人の心の奥深くまで覗き込むような心理描写、波乱のストーリー展開と、読者に訴えかける強い力を持ったとても面白い小説です。未完結ではありますが、最近新潮文庫から<完全版>として改めて刊行し直されていて、「これはそろそろ、ようやく完結するのではないか!?」と言われていることもあり、今回おすすめさせて頂きました。(完結するかどうかまだ本当に不透明なので、グイン・サーガパターン*が絶対に嫌な場合は全力で回避です! *未完で作者死去)。


おすすめありがとうその3。
十二国記シリーズのおすすめを頂いたのですが、昔どれか読んだハズ!どれか忘れたけど!と思い出す作業からのスタートでした。今回「東の海神 西の滄海」になったのは、刊行順からいって"月の影 影の海"と"風の海 迷宮の岸"は読んだことがありましたので、じゃあその次という単純な発想からです。別にお話がガッチガチに繋がっているわけじゃないし、いきなりこれからでもいいよね(顔色を伺いつつ)? 許してくれるかい?許してくれるね。ありがとう。
十二国記シリーズの魅力とその難しさは、緻密に創られた世界設定と其れゆえの見慣れぬ用語の数々にあるでしょう。もうね、ストーリーの内容を正直に書き連ねるとね、一見さんお断りのすんごい文章になっちゃってもうボクどうしていいかわかんない!ってなります。Wikipedia十二国記のページ(結末まで載ってるので注意!)は非常に簡潔に分かりやすく書かれていて「もうこれより簡単にしようがないだろ…」と思うくらいですが、それでもあの取っつき難さですからね。もうどうしようもないね。
じゃぁどうするかっていうと、阿呆を気取っているけど実は有能なおっさん王さまと、憎まれ口を叩きながらもなんだかんだ言って慕っている側近の少年とのやり取りにただキャッキャウフフするって寸法よ。あとは、捨てられたところを怪物に拾われて育てられたワイルドな野生児と側近の少年との交流物語?この2本でメインは進んでいくんですぜ。国のピンチがなんだ!謀反がなんだ!どんな時も国民の将来を熱く語る王さまに惚れろ!敵地に捕らわれ心寂しいときに飄々と現れる王さまにときめけ!みんなが待ち望む活躍をしてくれる王さまがいるこのお話に、わくわくしないわけがありません。
内容を抜粋しつつ感想を書くことはもう放棄したので身もふたもないお話の流れを説明しますと、
↓(前の王が荒しまくった貧乏な国からスタート)
↓(現在の王が頑張ってちょっとずつ緑化と復興が始まる)
↓(まだまだ貧乏だけど王さま頑張る。もうちょっとだけ復興する)
↓(復興が遅いから俺にやらせるべきだと思わんかね(周りを見渡しつつ)!?と内乱の動きあり)
↓(いかんいかん借金のツケがまわってきたよーだと王さま抗戦の構え)
クライマックス!(そして決戦へ…)
とまぁこのような流れの間に、王さまは阿呆だのんきだと臣下から滅多打ちにされ、一蓮托生なはずのお供の少年からは敵将の方が政治に向いてるんじゃないかと小馬鹿にされ、読者は戦乱の裏で笑いを堪えるはめになるのです。王さま、ホント最初から最後まで部下にボロクソに言われてましたからね。そんで口ではなんとでも言ってても、部下は一生懸命仕事をして戦いますからね。これも愛の形ですね。
小難しいことを考えようと思ったらいくらでも考えられそうな深い世界観と、別にそんなことを気にしないで、今目の前の危機に敢然と立ち向かう主人公たちに胸を熱くするのが一番の楽しみ方だぜ!という事も出来る結構広い窓口があるのがこの十二国記シリーズの魅力でしょう。しかしまぁ、文章は読み易いが漢字が読み辛いなこのシリーズは!