マルドゥック・アノニマス 1・2・3

マルドゥック・アノニマス 1 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・アノニマス 2 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ文庫JA)


マルドゥック・スクランブル(全3冊)、マルドゥック・ヴェロシティ(全3冊)に続く、シリーズ3作目の本作。
近未来の架空都市<マルドゥック・シティ>を舞台に、最先端の科学技術で嫌というほど武装強化された変態どもが起こす凶悪犯罪と、それに立ち向かうイースターオフィスの捜査官たちの日常を綴ったSFアクション小説です。日常ってのは、暗殺、脅迫、誘拐、拷問、監禁とかそんな感じのやつ。ダークですね。狂ってますね。
こちらのお話は前2作の続編となっておりますので事前に6冊ほど読んでおかないといけないという少しばかり高いハードルがありますが、それでも私はグイグイ読み進めてしまうほど、どれも続きが気になる面白さでしたね。というわけで注意する点としましては、マルドゥック・アノニマス3では全然話が終わってなくて「続く!」となっていた事でしょうか。
Σ(°д°lll)ウソー!?
過去2作品とも3冊ピッタリで終わっていたため今回も同じだと予想し、アノニマスの1巻(2016年)が発売されても「どうせ読んだら面白くて続きが気になって悶えるんでしょ!」となることが分かりきっていたためじっくり待つことはや2年。2018年の3月にとうとう待ちに待った3冊目が発売されて私の忍耐が完全勝利したかと思ったのですが、まさかの、まさかの未完結!結局のところ「続きがー続きがー」と悶えることになりましたとさ。ネタバレしないよう何の情報も仕入れていなくて、思い込みで行動したのが敗因さ。(しかし3冊目で終わりと考えていた人はいっぱいいるはず)
もう読んでしまった事はしょうがないとして、現時点の印象としてはとっても面白かったです。(悶えながら)
このマルドゥック・アノニマスの主役は、シリーズを通して重要なサブキャラだった金色ネズミのウフコックです。非常に多くの登場人物たちが関わってくるのもこのシリーズではよくあることですが、その中でも取り分けウフコックの目と思考を通して語られるお話が大部分を占められていました。一作目のマルドゥック・スクランブルで主人公だったバロットさんは健やかに社会復帰を果たし、学生生活をエンジョイしている様子が時折語られるも主軸のお話からは完全に外れていましたね。一作目も楽しんだ私としましてはバロットさんがあんまり活躍しないのが寂しくもありますが、逆に活躍するってことは凶悪犯罪にかかわることになるので平和に暮らしている証拠であると安心する思いもあります。
バロットさんが活躍した一作目は、不幸を装った事故に巻き込まれたバロットさんが最先端の科学治療で一命をとりとめ、さらにとどめを刺そうと襲ってくる最先端技術で強化されたとびっきりの変態どもと対決するお話でした。二作目は一作目でラスボスとして立ちはだかったボイルドさんの過去のお話で、仲間の超技術武装集団と敵の最先端技術の変態集団と全面対決するお話でした。三作目のお話は時系列的には最新となっておりまして、シリーズで同じみの強化改造手術を施された登場人物が何十人と登場して戦い合う、バトルロワイヤルなお話となっていました。敵でも味方でもない怪物たちもガンガン争い合って、もーめちゃくちゃです。こんな収拾のつかないようなお話で面白くなるのかと思いましたが、ここで敵側の主人公ともいうべき「ハンター」という人物が自分も含めて大量に生み出された怪物たちの作られた目的や正体不明の製作者について追い求めるよう行動し、謎を次第に解き明かしていくことによって先が気になる作りになっていました。謎を解いていくついでにハンターさんは他の強化された人間たちをボコったり懐柔したりしながら仲間を増やしていき、主人公たちの敵対勢力として強力にもなっていくので、話に引き込まれてグイグイ読み進めていると気付いたころにはすんごい悪役も完成しているって寸法です。
その凄い悪役をそばでずっと観察し報告し続けるのが、本作の主人公ウフコック。シリーズの登場人物の中でも屈指のチート能力、あらゆる武器や道具に変身して複製できる能力を使って潜入捜査を行うのです。ほぼ読者と同じような神の目線で敵情報を知りうるウフコックの様子は、もはや笑うしかないってくらいの爽快感すらあります。いいですよね、チート能力の爽快感と、それでもまだ上手の悪役の緊張感。
物語の冒頭でガス室に閉じ込められて絶望しているウフコックが描写されていましたが、実際のところガス噴霧自体は割と余裕で耐えて生活に支障がなさそうな辺りが判明したときは少し笑えました。
そして人生最高の時間と言わんばかりの楽しそうな様子がところどころ描写されていたバロットさんは、この後死ぬ前振りじゃないこれ?(作者的に)との疑惑を個人的に疑いながらも3冊目までは無事にフィニッシュ。4冊目以降で本格的に参戦の様子を見せながら、お話はまだまだ続きそうな感じで終わりました。
まだまだ途中の物語ですが、ひとまず3冊目で区切りとしては満足できる感じにはなっていますでしょうかね。何故かガス室に閉じ込められているウフコックで始まり、どういった経緯でこんなことになったのか、結局最後はどうなったのかまでを知ることが出来て終わりますので。
あとは…なんだ、年単位で待つことを覚悟すれば今できることは終わりだな!しかし二作目のヴェロシティから10年(現実の時間で)経ってるって本当ですかね。時の流れが信じらんねぇ…。